2012年9月26日水曜日

週末バイヤー体験@義烏


反日のデモがやや落ち着き始めた先週末、縁あって知人の出張に同行することになり、上海、および義烏まで出かけることになった。

義烏は、雑貨、家具の生産で有名な浙江省の街で、100円ショップで得られている製品はほとんどここで買い付けされている、と言われているほどで、雑貨、家具、小型家電、アクセサリー等の生産販売社がブースを構える巨大な市場が存在する。

今回お伴させてもらった香港人は、革製品のデザイン・製造販売の傍ら、小売店舗のディスプレーに利用される小物の手配をする会社に勤めており、クリスマス商戦に向けたある大手小売企業のクリスマスツリーの生産手配・管理のために今回義烏に来ることになった。元々義烏には興味を持っていたので行きたいなあみたいなことを言っていたら、この会社のオーナーとも仲良くしている関係から、渡航費まで出してもらって同行することになった。

上海虹橋駅から義烏へ。チケット売り場も多くの人で賑わう。

とにかく広い。贅沢なスペースの使い方。香港ではありえない。

人、人、人。来週の国慶節の時もさらに多くの人が訪れるに違いない。

手前の小さいのはサンプル。お土産にいただくことに。


この会社は別にクリスマスツリーを専門にやっているわけではないので、オーダーが入った後から淘宝やコネクションを利用して、生産してくれる工場を探し出した。意外とシンプルそうな製品だと思ったのだけど、工場によって対応できる品質や信頼度はかなりばらつくようで、結局大丈夫そうだと思えた工場は一つしか見つからなかったとのこと。

恐らくクリスマスツリーを作っている会社は何百とあるだろうし、どちらかというとコモディティに近い製品ではあると思ったのだけど淘宝等を利用して会社のプロモーションをして香港の会社に見つけてもらい、期待されている品質を提供し、コミュニケーションを通して信頼を勝ち取る、縁と言ったらそれまでだけど、工場経営者の地道な努力が何百万円規模のビジネスになったのだから、どんな製品でも違いを生み出すことは可能なのだなあ、と改めて思った。

新しいアパートも次々と建てられており、上海から2時間半も電車に乗って来る必要があるにも関わらず、日本、韓国、中東、アフリカ、欧米から多くのバイヤーが来てはいたけれど、現地の人たちの話では、やはり経済停滞の影響はあり、多くの工場が倒産している状況とのこと。そんな状況なので、今回生産を担当している工場にとっても、この香港からのオーダーは渡りに船のような状況であったらしく、非常に甲斐甲斐しく送迎の手配や工場案内、市場の案内までしてくれて、挙げ句の果てには、お昼の時に出てきたリンゴ酢が美味しいですね、どこで買えるのでしょうか、と言った一言で、帰るまでに12本も手配してスーツケースに詰めて用意してくれていた。実は今回は自分は、その香港人の会社の人間ということになっていたので、自分の余計な一言でそこまでさせてしまって後悔している。が、同時に、計らずも中国での商売のリアルな現場を少しだけ感じることもできた。食事も二回ほどご馳走になったけど、こちらも月餅を持って行ったり、誕生予定のお子さんのお祝い金を包んだり、となんだかお互いに贈り物のし合いで、差し引きゼロぐらいなのだけど、きっとこういうプロセスも大事なんだろう。

頂き物のリンゴ酢。河南省の製品。



市場を見学に行った時、ブースの前に中国の国旗が掲げられているブースがあり、案内してもらった人の話では、ここ数日このようなブースが増えたということで、日本人の顧客お断り、というようなメッセージがあるとのことだった。今回直接的には何も被害を受けたりはしなかったけれど、人々の読んでいる新聞やPC・スマートフォンで覗き込んでいるウェブサイト、街頭の電光掲示板に流れるニュース、そして、この国旗のような無言のメッセージで等、反日の雰囲気を感じることもあった。表立ったネガティブな感情の発露はないものの、ほとんどの人にとって少なくとも対日感情はニュートラル以下、好意を感じるということはないだろうな、というのが率直な感想だ。
細長い通路が延々と続く。全部のセクションを見て回るには一週間かかるとも二週間かかるとも言われているそう。



老若男女、スマートフォンは基本。iPhone(と思われる)物も子供のおもちゃぐらいの扱い。

中国の国旗が掲げられている店は日本人お断りという意味らしい。

釣魚島は中国の物、というメッセージが電光掲示板に。