2014年7月13日日曜日

4カ国語を操るスーパードライバー

離島とカテゴライズされるランタオ島の東涌に住む自分は、街中からタクシーで帰ると通常200ドル以上(3000円程度、だけど香港ではタクシー代としてはかなり高い方)もするためほとんどタクシーに乗ることはない。ほんのたまに、どうしても利用しなければいけない時は、流しのタクシーではなく、ある番号に電話する。と、通常よりも割引の固定料金でのせてくれるタクシーを呼び寄せることができる。違法なのか合法なのか未だにわからないのだけど、かなり組織化されているようで、携帯電話を運転席の周りに4つも5つも並べて、専用のAppsを駆使してグループ内のドライバーとコミュニケーションをとりながら、顧客からのオーダーをさばているようだ。

そんなわけで、顧客が後ろに乗っているにも関わらず、ドライバーはだいたい他のドライバーや顧客と電話で話しながら運転していることが多い。Bluetoothを使ったハンズフリーのツールを使って話しているので、最初の頃は自分に話しかけているのか、独り言を言っているか等、ドキドキしたこともあったものだ。

そんなある日、どうしてもタクシーで街中まで出なければいけないことがあり、仕方なくこのタクシーを呼んでみた。通常200ドルぐらいかかる九龍の中心地までも、このタクシーなら150ドルで行ってくれる。

乗り始めてしばらく、いつものようにドライバーは顧客からの電話を受けては、ある時は自分で後にピックアップに行く約束をしたり、ある時は他のドライバーに振ったりと絶え間ない問い合わせをテキパキと処理している様子だった。乗ってる方からすると運転に集中してもらいたいものだけど、合法かもわからないサービスを利用している後ろめたさもあり、そんなことはちょっと言えない。だいたい広東語でほとんどわからないので、別に注意も向けていないのだけど、突然ドライバーが日本語を話しだしたのには驚いた。「ハイ、ハイ」、「ナンジデスカ?」、「ハイ、ハイ」(常に2回言う)「ドコイク?」、「ダイジョウブ、ダイジョウブ」、「アアッ?」(ここは通じなかったらしい)「バンゴウネ、89XXヨ。」、「ジャネ、バイバイ」。どうやら会話(商談)が成立したらしい。

香港人は広東語がネイティブだけど、基本的にオフィスワークやっているような人たちは、だいたい英語も北京語もそこそこ話すし、それに加えて、日本語や韓国語、フランス語なんかの第四外国語を話す人も結構多いので、もうあまり驚かない。しかしタクシードライバーで日本語話すってのは初めて会ったし、初めて聞いた。気になって聞いてみると、実はそんなにペラペラではないらしい。しかし、かかってくる電話はタクシーの予約の話に間違いないだろうし、そしたら話す内容なんて、時間、場所とタクシーのナンバーぐらいでほとんど足りるので、たいして話せなくても問題はないのだろう。

ちなみに自分はいつも英語で電話をかけて、ほとんど問題ないし、恐らくこの地区であれば中国人もたくさんいるし、北京語だって、予約受けるぐらいは余裕でしゃべるはずだ。日本のタクシードライバーのようにお行儀も良くないし、車だってちょっとヨレヨレ、運転も荒いし、何しろしゃべりっぱなしでうるさい。こうしたサービス面では適わないのだけど、言葉は3つも、4つもしゃべるので、お客が中国人だろうと、欧米人だろうと、場合によっては日本語しかできない日本人であろうと、なんとかコミュニケーションが取れるという強みがある。現在日本に来る外国人で、不安なくタクシーを乗りこなせる人がどれくらいいるだろうか。香港も不安がないわけではないが、外国人にとってのコミュニケーションのハードルは日本とは比べ物にならないくらい低い。外国語は子供の頃からの教育が大事だなんて言うけれど、あのタクシードライバーはきっと仕事を始めてから必要に迫られて、もしくはなんらかのきっかけで日本人を乗せたことから日本語の勉強を始めたに違いない。それでなんとか最低限のコミュニケーションができるぐらいにはなるのだから、2020年の東京オリンピックを見据えて、東京のサービス業従事者は、今から本気で英語を勉強すれば、それまでになんとかなる、必要十分な語学力は身に付くのではないかと思う。